カルパッチョ / Carpaccio

 薄くスライスした牛サーロインをお皿に並べ、同じように薄く削ったパルミジャーノ・レッジャーノとルッコラを乗せ、さらにマヨネーズと牛乳とウスターソースなどで作るウニヴェルサーレというソースをかけると、カルパッチョの元祖Carpaccio alla Ciprianiカルパッチョ・アッラ・チプリアーニの出来上がりです。

 この料理は、ヴェネツィアの「ハリーズ・バー」”Harry’s Bar”創業者のジュゼッペ・チプリアーニが、1950年に、友人で医者から調理済みの肉を禁じられていた伯爵夫人のために考案したものだそうです。その際に、生肉の色からヴェネツィア派の画家ヴィトーレ・カルパッチョの描く濃い赤を連想し、料理名をカルパッチョとしたといわれています。これはハリーズ・バーの名物カクテルのベッリーニBellini[1]ピューレ状にした桃とシャンパンをステアして作りますの名が、彼に画家ジョヴァンニ・ベッリーニのピンク色から想起させたことと同じです。

左:カルパッチョ画「エジプトへの逃避」/ 右:ベッリーニ画「鏡の前の裸婦」

 ちなみにハリーズ・バーとは、チプリアーニが若いころに働いていたホテルで知り合い、融資を受けることになったアメリカの友人の名前から付けられました。ハリーズ・バーは多くの著名人を顧客に持っていることで知られます。アーネスト・ヘミングウェイもそのひとりです。彼はヴェネツィアが舞台の作品”Across the River and into the Trees”「川を渡って木立の中へ」(1950年)でこの店のことを描写しています。

 チプリアーニは、1958年にヴェネツィア本島の喧騒から隔絶された場所としてジュデッカ島に自身の名を冠したホテルを開業します。そのラグジュアリーな施設とサービスはすぐに評判となり、映画スターや各国の首脳が好んで滞在するようになりました。今でもヴェネツィアを代表するホテルのひとつです。

 カルパッチョというと日本では様々なアレンジレシピが紹介されていますが、イタリアでも、マグロ、メカジキ、タコ、サーモンといった牛肉以外を使ったものがたくさん提供されています。

 これはビンナガマグロを使ったもの。ソースはオリーブオイルとレモン汁のみで、潰したピンクペッパーと松の実を振りかけました。

References

References
1 ピューレ状にした桃とシャンパンをステアして作ります