アフガニスタンの郷土料理の代表格といえばカブリ・パラウKabuli Palaw / قابلی پلو(カブール・ピラフ)。
学生時代には、主に飲食店でアルバイトして、資金を貯めては海外旅行へ出掛けることを繰り返していました。その最後に働いた飲食店がアフガン料理のレストランです。アフガン料理というと日本では聞いたこともない人が多いでしょうし、どんな料理か想像ができないかもしれないですね。それでもロンドンやニューヨークをはじめ欧米の大都市では、アフガン・レストラン自体が決して珍しくはありません。
アルバイト当時はソ連軍がアフガンに侵攻中。もともと宝石商だったアフガニスタン人のオーナーが、里帰りすることもままならない状況の中、故郷の料理を広めたいと開いたお店です。そのオーナーは私がバーテンダーをしていた店の常連客だったことから、半ば引き抜かれた?かたちで働くことに。シェフ以外は全員外国人という職場で、学生の分際でありながらマネージャーという肩書と、その頃の大卒初任給の2倍ほどの高額な月給をいただいていました。そこで覚えたのがアフガン料理の数々。アフガン料理は、イランやトルコ、中央アジア、それにインドの料理にも近いですが、辛くはありません。本来、カブリ・パラウは羊肉を使います。でもここでご紹介するのは、代わりに牛肉を使ったレシピです。お店では業務用の大きな炊飯器を使用していましたが、家では土鍋で炊きます。カルダモンはアフガン料理に欠かせないスパイスなので、これだけは必ず入れてほしいところです。
●材料・下ごしらえ(4人分)
牛肉…300g(すね肉、バラ肉など)
※3~4cmほどに切る
クローブ…5粒
水…600ml+α
△肉を茹でた汁で米を炊くので、その際に足りない分を補う
タマネギ…1/2個(100g程度)
※みじん切り
アーモンド…20g(スライスされたもの)
オリーブオイル…大さじ
ニンジン…2/3本(100g程度)
※千切り
サルタナレーズン…80g
トマトペースト…大さじ1>つくり方 トマトペースト
砂糖…小さじ1
塩…ひとつまみ
黒胡椒…ひとつまみ(粗挽き)
カルダモン…小さじ1/3(砕いたものか粉末)
クミン…小さじ1/3(粉末)
バスマティライス…3合(ほかのインディカ米でも可)
※軽く洗う 細くて割れやすいので注意
●つくり方
1.肉を茹でる
鍋に牛肉とクローブ、600mlの水を入れて中火にかける。沸騰したらアクを取り、蓋をして弱火で30分ほど茹でる。
2.タマネギを炒める
フライパンにオリーブオイルを引き、タマネギとアーモンドを中火で炒める。タマネギが透き通りアーモンドに薄く焼き色が付いたらOK。
3.米を炊く
土鍋に米を入れ、その上にニンジン、レーズン、2のタマネギとアーモンドをオイルごとのせる。さらに肉を周りに並べるように置く。肉のゆで汁を量り、水を加えて合計で600mlになるようにして注ぐ。さらにトマトピュレ、砂糖、塩、黒胡椒、カルダモン、クミンを入れたら蓋をして炊く。土鍋の炊飯時間はずっと中火で13分30秒の設定。
水の量と炊飯時間は基本的に日本の米を炊くときと同じで大丈夫ですが、炊飯器の場合は取扱説明書などに従ってください。早炊きモードなどのほうが良いとも聞いたことがあります。
オーナーのアフガン人と出会う前には、ソ連侵攻のニュース以外のアフガニスタンに関する知識は乏しく、頭に浮かんだのは映画「ホットロック」”The Hot Rock”に出てくる「アフガニスタン・バナナスタンド❣❣」”Afghanistan banana stand”ぐらいでした。1972年に日本公開のこの映画は、ジョン・ドートマンダー率いる泥棒一味を描いたドナルド・E・ウエストレイクの小説が原作。監督は「ブリット」”Bullitt”「ザ・ディープ」”The Deep”のピーター・イェーツ、音楽がクインシー・ジョーンズ、ジョン役の主演はロバート・レッドフォードでした。”Sahara stone”「サハラの石」と呼ばれる大きなダイアモンドを手に入れるため、銀行の貸金庫係に催眠術をかけます。催眠状態にする際の合言葉が「アフガニスタン・バナナスタンド」。特に意味がないだけに耳に残るフレーズかもしれません。最後は残念な結果に終わることが多い犯罪映画とは異なるオチが最高です。