オレンジから製造されるリキュールのうち、最も知られているのがキュラソーCuraçaoです。オレンジの果皮を、アルコール度数の高いスピリッツなどに浸漬し蒸留して作ります。中でも有名なのがフランスのコアントロー社Cointreau創出によるものです。無色透明のためホワイトキュラソーに分類されますが、三回蒸留[1]アイリッシュ・ウィスキーの伝統的製法 スコッチでもオーヘントッシャンAuchentoshanはこの製法を継承による濃厚でドライな味わいからトリプルセックTriple secと名付けられています。フランスでコアントローと並んで両雄とされる、グラン・マルニエGrand Marnierというキュラソーも有名です。こちらは樽熟成をするために琥珀色に近い液体となり、オレンジキュラソーに分類されます。どちらも食後酒やカクテル材料となるだけでなく、製菓用としても一般的に使われているのでご存知の方も多いでしょう。
キュラソーとは、カリブ海に浮かぶ島の名前です。バハマを除くすべてのカリブ海の島は総称してアンティル諸島と呼ばれます。アンティルとは、新世界発見前のヨーロッパで大西洋の向こうに存在すると信じられていた島々あるいは大陸のことです。カリブ海は、多くのヨーロッパ言語でアンティル海とも表記されます。アンティル諸島を構成する島の中にはかつてオランダ領アンティル諸島Nederlandse Antillenとなっていた6つの島が。そのうちベネズエラ沖に位置するアルバ、ボネール、キュラソーの三島は頭文字からABC諸島と名付けられました。キュラソー島のヴィレムスタットWillemstadは蘭領アンティルの拠点として栄え、色とりどりの建物が並ぶ歴史地区は世界遺産に登録されています。
オレンジはもともとキュラソーに自生していたわけではなく、16世紀にスペインから持ち込まれたものです。セヴィージャオレンジとも呼ばれるビターオレンジ[2]日本のダイダイも同じ仲間は、この土地の風土には栽培が適さず、小粒で緑色の果実しかつけませんでした。固くて苦いので食用にはならなかったため放置されていたところ、その果皮から強い芳香のあるエッセンシャルオイルが精製できることがわかりました。ララハと名付けられたオレンジは、Citrus Aurantium Currassuviensisの学名をもらい、リキュールづくりに用いられるようになったそうです。[3]キュラソーで唯一のキュラソーリキュール会社Senior & Co.のウエブサイトによります
キュラソーは、ほかの多くのリキュール同様に甘い食後酒としてそのまま飲まれます。でもそれ以上にカクテルや洋菓子の材料とされることが多いでしょう。マルガリータ(テキーラベース)、サイドカー(ブランデーベース)、XYZ(ラムベース)、バラライカ(ウォッカベース)などはベースのお酒が違うもののキュラソーとレモン果汁を加えてつくるスタンダードなカクテルとしてよく知られています。
キュラソーには、樽で熟成させて色付けされたオレンジキュラソーのほかに赤、青、緑といった人工着色料使用のものがあります。特にブルーキュラソー[4]青色1号使用はカクテルに利用されることが多く、ロンドンのザンジバークラブZanzibar Club考案のブルーハワイアン[5]ホワイトラム、ブルーキュラソー、パイナップル果汁、ココナッツクリームをシェイクしてつくりますおすすめの一杯です。