ストックホルム / Stockholm

スウェーデンの首都ストックホルムStockholmは、近隣国のヘルシンキ、タリン、サンクトペテルブルクなどとほぼ同じ北緯59度に位置します。北海道などよりずっと北の、カムチャッカあたりと同程度の場所です。人口は75万人ほどしかいませんが、それでもスカンジナビアでは最大の都会。大小の島々を結ぶ橋と運河という町並みから、北のベニスなどとも呼ばれることがあります。13世紀に、現在ガムラスタンGamla stanと呼ばれる旧市街のある場所に町の基礎が造られたといわれ、バルト海沿岸諸都市との交易で栄えました。ストックホルムという地名は「丸太の島」という意味です。大量の丸太を杭にして島の周囲に打ち込んでは町を形づくり、さらに周辺諸都市に対しての防御のための砦を築いたことからその名があるのだとか。

ストックホルムのランドマークはなんといっても市庁舎stadshusです。毎年12月のノーベル賞の授賞記念晩餐会が行われる場所としてご存じの方も多いはず。現在の建物は、1902年に行われた建築コンペで優勝したスウェーデン人の建築家ラグナル・エストベリRagnar Östbergの設計です。どっしりとした重みのあるレンガづくりの荘厳な大建築ではあるものの、市庁舎なので中では普通に公務が行われており、中庭や裏庭は観光客でも気軽に入ることができます。でも、ノーベル賞晩餐会の会場となる「青の間」Blå hallenと、ダンスパーティが行われる、2階部分の金箔で覆われた「黄金の間」Gyllene salenに入ることができるのは、ガイド付きツアーでの見学のみです。「青の間」という名前なのに内部はまったく青いところがありません。エストベリは当初、壁全体を青い漆喰で塗り固めることを計画しており、さらに屋根をかけずに吹き抜けにして青空が見られるようにと設計したといわれます。しかし、後にむき出しのレンガ積みに本質的な美しさを見出し、漆喰を塗ることをやめました。また、冬場や雨天の使用を意図した市議会の意向により、天井と屋根も追加され現在の姿になったのだそうです。1934年から開催されているノーベル賞晩餐会は、当初「黄金の間」が会場でしたが、1974年からはより広い「青の間」に移されています。

左:市庁舎 / 右:青の間 

その「青の間」では、ノーベル賞晩餐会以外にもさまざまなイベントが開催されます。700人ぐらいまでなら貸し切っての着席パーティも可能です。本番の晩餐会には、毎年新しいメニューが提供されます。一般の人でもそれと同じノーベルメニューの食事が楽しめるところが、市庁舎の地下にあるレストラン、シュタットヒュスシュラーレンStadshuskällarenです。過去のそれぞれの年の晩餐会メニューを取り揃えているので、例えば日本人が受賞した年のものとかを選んで、希望の年度のコースをリクエストすることができます[1]最低人数など予約条件あり。何度か食べたことがありますが、味も見た目もそこそこのフランス料理というところでしょう。

旧市街へ行けば、アルフレッド・ノーベルAlfred Nobelとノーベル賞受賞者の功績をたたえる博物館を見ることができます。館内のカフェには、ノーベル賞受賞者がサインをすることが毎年の恒例となった椅子が。そして、ここでしか手に入らないノーベル賞のメダルを模ったチョコレートは、ストックホルムの人気のお土産のひとつです。

左:ノーベル博物館 / 右:チョコレート

ストックホルムには、T-BANA[2]Tunnelbanaの略と呼ばれる、3路線で合計約110㎞の地下鉄が通っています。市内観光が目的の滞在の場合には、さほどの利用価値はないので、乗ることは少ないかもしれません。でも、ここの地下鉄には「世界最長の美術館」と称される美しい駅の装飾があり、わざわざそれを見に出掛けてもいいほどのものです。剝き出しの岩盤が特徴的な駅構内は、主に北欧の著名なアーティストの手によって華やかに彩られています。

スウェーデン料理というと所謂バイキングが有名ですね。スェーデン語ではsmörgåsbordスメルゴースボードと言います。要するに好きな料理を好きなだけ取って食べるブッフェ形式の食事です。 ストックホルムには、さほど多くはないものの、ちゃんとしたスメルゴースボードを食べられるレストランがあり、特にグランドホテルGrand Hotel[3]19世紀から続く由緒ある5つ星ホテルのThe Verandaがよく知られています。一応、最初に前菜、その後に冷たい魚、肉、温かい料理、そしてデザートという順番で食べるというルールのようなものがあっても、食べ方はその人の自由。いろいろ試してみてお気に入りの料理があれば、何度でもお代わりすればいいでしょう。

References

References
1 最低人数など予約条件あり
2 Tunnelbanaの略
3 19世紀から続く由緒ある5つ星ホテル