コロラド州の州都デンヴァーDenverは標高が1,609m（5,280フィート）にあり、約1マイルなのでThe Mile High Cityと呼ばれます。世界には富士山頂に近い高さのボリビアの首都ラパス（3,640m）をはじめ、2,000m以上の高地の都市はいくつもあります。それでも日本に限った場合、2,000m以上の山は何百峰もあるものの、標高1,000mを超える町や村は数少なく、県庁所在地では長野市の371mが最高です。標高が上がれば気圧は下がり、1,600mでは高山病の症状が出るほどではないにしても酸素濃度は薄くなります。慣れれば普通なのでしょうけれど、そういう環境での暮らしというのはなかなか想像がつきません。中には好きで高原へ移り住んだりする人もいますけどね。
現在デンヴァーには、アメリカ4大プロスポーツのチームがそろっています。MLB[1]Major League Baseballはコロラド・ロッキーズ、NFL[2]National Football Leagueはデンヴァー・ブロンコス、NBA[3]National Basketball Associationはデンヴァー・ナゲッツ、NHL[4]National Hockey Leagueのコロラド・アヴァランチです。小生が初めて訪問した1988年時点には、ロッキーズとアヴァランチはまだチームがなく、ナゲッツはプレーオフに進出してもなかなか勝ち上がれず、ブロンコスは鳴り物入りで入団したジョン・エルウェイJohn Elway[5]クォーターバック・1983-98在籍・背番号7はブロンコスの永久欠番が活躍しているものの、スーパーボウルでは勝てない[6]その後スーパーボウルは1997、1998、2015と3度の制覇という時代。折しも、石油産業に依存していたデンヴァーは、原油価格の大幅な下落で経済が低迷していました。現地に長く暮らす年配の日本人女性が丁寧に市内を案内してくれたのですが、ダウンタウンへ行くと、「それもあれもビルデンはエンプティです」「この店はブーミンしていたのにクロージャしました」「スナチャー[7]引ったくりに気を付けてください」などとどうも景気の悪い話ばかり。確かに町の中心地のはずなのに人影もまばらで活気がなく、まるでゴーストタウンのような雰囲気だったのを覚えています。
しかし、90年代に入り、それまで石油、ガスと空軍基地それにビール[8]Coors・初めてアルミ缶のビールを販売した会社頼りだった経済を大きく転換し、電気通信、放送、宇宙、航空、バイオサイエンス、情報技術といった分野で躍進してきました。また、デンヴァーは西部各州への物流拠点となると同時に、東西の大都市をつなぐ中継地としても重要な位置にいます。デンヴァーの交通の中心はユニオン駅。シカゴとサンフランシスコを結ぶ長距離列車をはじめとする国内各方面への鉄道だけでなく、RTD[9]Reginal Transportation Districtが運行している近郊電車やバス、ライトレールという各種の交通機関が集約されています。
デンヴァーから日帰りで行くことも可能な一番の観光スポットはロッキー山脈国立公園Rockey Mountain National Parkです。ロッキーは、アメリカのニューメキシコ州からカナダのブリティッシュコロンビア州まで南北に4,800kmも連なる山脈。その最高峰はコロラドにあるエルバート山[10]標高4,401m・デンヴァーの南西約200㎞です。国立公園になっているのはロッキー山脈のごく一部ではあるものの、それでも面積は1,075㎢で、秋田県より少し小さいぐらいの広さがあります。
デンヴァーを出発したら、まず国立公園のゲートウェイになるエステス・パークEstes Parkへ。小さい町ながらレストランとかアウトドアグッズやお土産を扱う商店がズラッと立ち並んでいます。ここから公園のヴィジターセンターは目と鼻の先です。1915年に国立公園となったロッキー山脈国立公園は、3分の1が森林限界よりも上にあります。雪を頂き重なるように続く岩山、ベイマツやネズの森といくつもの湖を抜けて川が流れる峡谷、野生動物に野鳥、そして高山植物。ドライブだけでも十分楽しめるところです。余裕があればハイキングやトレッキング、乗馬、釣りなどに挑戦して自然を満喫しましょう。
さて、くだんの女性は宿泊ホテルまで送ってくれることに。車に乗ると彼女はこう言います。「お泊りになるホウテルはハラダーインシリセナです」⁇ Holiday Inn City Centerでした。
References