ニチニチソウ

夏の花壇を彩る草花の定番のひとつになっているのがニチニチソウです。その名の通り毎日のように次々と新しい花を咲かせ、しかも暑さに非常に強く真夏の炎天下にひときわ元気になるため人気があります。もともとマダガスカルやインドネシアなどの熱帯地域が原産で、キョウチクトウ科の常緑小低木という扱いですが、日本では冬越しが難しいので一年草の仲間です。葉をよく見ると光沢があり厚手でいかにも熱帯生まれという感じがしますね。花色は白やピンク系が多く、最近では濃い紫もあります。花弁は5枚あるように見えていても、実は筒状の花弁が5つに裂けている合弁花、つまり花弁は1枚だけなのです。ニチニチソウは草丈も低く寄せ植えにも便利で手軽な園芸植物でありながら、ビンクリスチンとビンブラスチンというふたつの成分が抗がん剤として効果のあることが認められている薬用植物でもあります。

ニチニチソウの英名は一般にmadagascar periwinkleとされます。periwinkleとはヨーロッパで以前から知られていた、地中海沿岸地域に自生するツルニチニチソウのこと。マダガスカルで発見されたニチニチソウがツルニチニチソウに似ていることからその名が付きました。ツルニチニチソウは匍匐性があり春に鮮やかな青紫色の花を咲かせます。英語ではその美しい花色にちなんで紫がかった青もperiwinkleと呼ばれます。またperiwinkleには、もうひとつ日本語にするとタマキビ(玉黍)という、ヨーロッパでは食用にする小さい巻貝の意味もあり、これはツルニチニチソウのつぼみの形状がその巻貝にそっくりだからです。ツルニチニチソウの学名はVinca majorで、小型のヒメツルニチニチソウはVinca minorとして区別されます。これに対してニチニチソウの学名は、Catharanthus roseusです。以前はツルニチニチソウの仲間ということでVinca roseaという学名がついていたものの、自生地の違いから分類が改められて学名が変更されました。

右:ツルニチニチソウ

学名というのは、生物に付けられる世界共通の名称のことで、スウェーデンの植物学者Carl von Linnéカール・フォン・リンネによって植物の分類のために考え出されたものです。1753年に出版された彼の著作”Species Plantarum”の中で紹介されたのが始まりとされます。リンネの考えた学名が、ラテン語による属名と種小名の組み合わせによって表される「二名法(二項命名法)」です。その後世界中の生物学者が、この方法に則り新たな学名を考え出してきました。しかしながらその使用方法には確実な決まりがなく、さまざまな問題が生じていたのです。そのため学名の使い方の取り決めをするためにICN(International Code of Nomenclature for algae, fungi, and plants)国際藻類・菌類・植物命名規約[1]2011年以前はICBN国際植物命名規約なるものができました。この規約は6年ごとの学会で改正されています。これはあくまでも植物の学名を決めるためのルールであって、分類学や分類体系とは別のものです。

学名の中にはsynonymシノニム「異名」と呼ばれるものがあります。これはすでに学名があるのに、新種として別の学名が付けられてしまったり、ある種の変種だと考えられていたものが独立種だとわかったりする場合や、逆に別種とされたいたものが同一種だと判明したりする場合に生じるものです。ニチニチソウの場合もVinca roseaは異名として並べて記載されることがあります。

References

References
1 2011年以前はICBN国際植物命名規約