シチリア州Siciliaの州都パレルモPalermoは、シチリア島の中心的存在として長く栄えてきた町です。シチリアでは、古代からフェニキア、ギリシャ、ローマ、東ローマの時代を経て、9世紀にはアラブ、そして11世紀のノルマン人による征服後に、イタリア半島南部も含めたシチリア王国が誕生しました。その後も、シチリアは1861年のイタリア統一まで何度も支配者が変わります。そのためパレルモの町中には、変遷を物語るように様々な建築様式の融合が見られる場所が残っているのです。
歴史の上でパレルモの名を知られているのが「シチリアの晩祷(ばんとう)[1]シチリアの晩鐘、シチリアの夕べの祈りとも呼ぶ」I Vespri Sicilianiという事件でしょう。シチリアがシャルル・ダンジューCharles d’Anjou[2]敬虔なキリスト者で聖王と呼ばれた仏王ルイ9世の弟率いるフランス軍に征服され人々が虐げられていた1282年、復活祭月曜日の日没のお祈りの際に起きました。サント・スピリト教会前に集まってきた市民たちが、些細ないざこざからフランス兵を次々と虐殺したことに端を発し、シチリア全土でフランス人狩り[3]ひよこ豆(シチリア語でciciriチチリ)を見せて正しく発音できるかどうかでフランス人を判別したとかともいえる反乱が続きます。そして、シャルルの軍勢を島から追い出すことに成功。これにより、シチリアの王冠はアラゴン王に与えられ、イタリア半島側のフランス領土はナポリ王国となりました。この事件はジュゼッペ・ヴェルディ作のオペラでも名高いので、ご存じの方もいるでしょう。
イタリア語で「パレルモの」という形容詞はPalermitanaあるいはPalermitanoです。料理としてパレルモ風というと、イワシとフェンネルのソースを和えたパレルモ風パスタPasta alla Palermitanaなどもありますが、ここでは鶏むね肉を使ったパレルモ風コトレッタCotoletta alla Palermitanaをつくります。イタリアでコトレッタと言えば、仔牛肉のミラノ風Cotoletta alla Milaneseが有名です。ミラノ風は小麦粉と卵、パン粉で衣をつくりバターで揚げ焼きにするのに対して、パレルモ風は粉と卵は使わずにオリーブオイルの揚げ焼きにします。ちなみにオーストリアはウィーンの名物料理Wiener schnitzelヴィーナー・シュニッツェルは、19世紀にオーストリア帝国のラデツキー元帥[4]ロンバルディア・ベネツィア総督がコトレッタ・アッラ・ミラネーゼのつくり方を伝えたことから広まったのだそうです。
大事なのは、肉の厚みを整えること。旨味や水分が出てしまうので、肉叩きで叩いたり、フォークで穴を空けたりせずに、厚みのある部分は包丁で切り開きましょう。白ワインに少し浸けて置くだけでしっとりします。
●材料・下ごしらえ(4人分)
鶏むね肉…2枚(1枚300g程度)
白ワイン…大さじ1
塩…小さじ1/2
白胡椒…小さじ1/2
イタリアンパセリ…3枝
※みじん切り
パン粉…40g
ペコリーノロマーノ・チーズ…40g
※すりおろす
オリーブオイル…60ml
●つくり方
1.肉を切り分ける
鶏肉を横から2枚に切り分ける。
厚みのある所はさらに切れ目を入れて全体が均等に7~8mmほどの厚さになるようにする。
バットに白ワインを入れ、表面の水分を拭き取った肉にワインを絡めながら並べる。
落としラップをして冷蔵庫に10分程度入れておく。
2.衣をつくる
バットかボウルにパン粉を入れて、チーズとパセリを加えてよく混ぜる。
冷蔵庫から出した肉に塩と胡椒を振りかける。
肉を1枚ずつ衣の中に入れて表面を押さえながら、両面にしっかりとパン粉を付ける。
3.揚げる
フライパンにオリーブオイルを引き、肉を並べてから中火にかける。
焼いている面がキツネ色になったら裏返す。
程よく焼けたところで皿に盛り付ける。