グリム童話「ブレーメンの音楽隊」で有名なブレーメンBremenは、北ドイツの主要都市のひとつです。かつては、近隣のハンブルクHamburgやリューベックLübeckとともに、バルト海沿岸地域の貿易を支配した、ハンザ同盟の中核を担っていました。現在も、自由ハンザ都市ブレーメン(Freie Hansestadt Bremen)を正式に名乗っています。町はヴェーザー川に面して南北にひろがっており、その川を60kmほど下った北海に注ぐ河口にあるのが、ブレーマーハーフェンBremerhavenと呼ばれるブレーメンの外港です。近年再開発されたブレーマーハーフェンは、単なる港湾施設だけでなく、ショッピングセンターや博物館、体験型アトラクションなどがあり、多くの人々が訪れるようになりました。
ブレーメンの旧市街は、「マルクト広場の市庁舎とローラント像」として世界遺産に登録されています。旧市街の中心に位置するマルクト広場では、そこを取り囲むゴシック様式の市庁舎と商業会議所、聖母教会などの壮麗な建築が見どころです。ローラントというのは、中世叙事詩の「ロランの歌」[1]カール大帝の騎士ロランのサラセン軍に対する勇敢な戦いを描いていますで英雄として謳われるロランのこと。高さ5mを超す巨像です。
ブレーメンの住宅地を歩くとよく見かけるのが下の右の写真のような設備です。欧米の寒い地域では、家の一部にこんな形でガラス張りのテラスのような部分を設けることが珍しくありません。ドイツではこれをヴィンターガルテンWintergartenと呼び、特に北部では、どこの家にも道路に面するような位置に作られています。目的はもちろん温室と同じで、冬場の短い日照を精一杯利用して明るさと暖かさを取り入れるためです。色や形も大きさも装飾もそれぞれでありながら統一感もあり、調和された町の景観をつくっています。
この町へ行ったら忘れずに訪れたいのがシャクナゲ公園Rhododendron-Park。46ヘクタールの広大な公園には、600近くに野生種と3,000を超える栽培種。特に一番の開花時期となる春から初夏には、色とりどりのシャクナゲとツツジとアザレアが咲き誇ります。日本では低木のツツジを刈り込んで楽しむのが一般的ですが、ドイツなどヨーロッパの国々では樹高が2mを優に超える大株のシャクナゲのほうが人気です。公園の中には、高山植物、薬用植物を展示する植物園や「Botanica」と名付けられた展示施設もあり、地球と植物に関する博物館と主にアジアの植物を集めた温室を見ることができます。
ブレーメンには、クニップknippという郷土料理があります。豚や牛の肉と脂肪と内臓に、ひき割りにした大麦やオーツ麦などを混ぜてつくる[2]お店により中身はさまざま 昔は、肉を捌いた後の残った部分を使ったらしいです大型のソーセージです。輪切りにして焼いて供します。またこれに似て、ブレーメンのあるニーダーザクセン州の北部を中心に食べられているピンケルpinkelというソーセージも有名です。クニップもピンケルもグリュッツブルストgrützwurstと呼ばれる穀物入りソーセージの仲間で、ジャガイモや塩ゆでにしたケールと一緒に食べます。