ベルゲン / Bergen

北欧はスカンジナビア半島の西半分を占めるのがノルウェーです。ノルウェーといえばフィヨルド。その観光拠点となるのがベルゲンです。首都オスロに次ぐ第二の都市でありながら、都会の喧騒とは無縁の風光明媚な場所。北海から流れ込むフィヨルドの奥に位置し、暖流と偏西風の影響から真冬でも凍ることのない港を持つので、中世以降交易の拠点として大いに栄えました。ヴァイキングの時代から続く港町は、いまでは大型客船の寄港地として、北極圏へ向かう沿岸急行船の発着地として、さらに有名なフロム鉄道ともつながるノルウェー鉄道ベルゲン線の出発地として北欧の旅でははずせない存在です。

ベルゲンの町は7人の娘に例えられる7つの山に囲まれています。そのうちのひとつフロイエン山 Fløyen[1]標高320mへは町の中心からケーブルカーで登ることが可能です。頂上からは、町の全景とともにフィヨルドや遠くの島々まで見渡すことができます。
この町で生まれ育ったのが「ペール・ギュント」Peer Gyntが代表作として知られる作曲家エドヴァルド・グリーグEdvard Hagerup Griegです。ベルゲンの郊外には、彼が住んだ家が博物館として残されています。その場所はグリーグ自身によって北欧の妖精トロルの丘という意味のトロルハウゲンと名づけられました。家のすぐ近くには、小さなコンサートホールが作られ、グリーグの作品を中心としたコンサートが開かれます。上皇上皇后両陛下も訪問された場所です。近代的なホールは周囲の景観を乱さないように半地下になっており、屋根は緑化されています。

左:フロイエン山から見たベルゲンの町並み / 右:トロルハウゲン

「ペール・ギュント」は、グリーグが戯曲の作者ヘンリク・イプセンに依頼されて書いた曲。「山の上の魔王の宮殿」が有名ですね。現代まで数多くの楽曲にサンプル[2]個人的にはCaptain Jackの”Dream a dream”が好みされてもいます。ノルウェー語のタイトルはI Dovregubbens hall。Dovregubbenとは作者ヘンリク・イプセンの創作で、ドヴレの男のような意味があり、ペールが遭遇するトロルの王のことです。ノルウェー中部にはドヴレDovreという国立公園になっている山岳地帯があって、荒涼とした山々と森林から異界に通じるイメージかもなどと勝手な想像も。ここでは放牧されたジャコウウシがシンボルになっています。

左:カイ・ニールセン作 太陽の東 月の西で描かれているトロル / 右:ジャコウウシ

ベルゲンの植物といえばシャクナゲRhododendron lapponicum (英語名Lapland rosebay)です。ゆっくり訪れる春から白夜を迎える夏にかけて、山盛りの花をつける大きな株が町なかのあちこちで見られます。濃いピンクや淡い紫の花が群生する姿はとても印象的です。ツツジ科ツツジ属のシャクナゲの原産地はヒマラヤの高山地帯。それが欧米に紹介されて栽培地域が広がりました。ベルゲンでは、イギリスから持ち込まれた品種が大学で交配され、市内で栽培されるようになったそうです。根付いたのはその冷涼で多湿な気候に適合したのでしょう。
また、このあたりではブナの大木もたくさん見かけます。ヨーロッパブナと呼ばれるいくつかの種ですが、樹皮や樹形が独特で、トロルのイメージが連想されます。

References

References
1 標高320m
2 個人的にはCaptain Jackの”Dream a dream”が好み