ホリホックHollyhockは、学名がAlthaea rosea、和名がタチアオイあるいはハナアオイというアオイ科の多年草です。垂直に大きく伸びて、高さが2m以上になることもあるのでとても目立ちます。よく、梅雨入りごろに下から順番に花が咲き、先端に花が付く頃に梅雨が明けるから梅雨葵(ツユアオイ)とも言うなどと聞きますが、実際にはそうではありません。ホリホックは非常に花期が長く、本州では5月中旬ごろから秋の始めぐらいまで咲き続けます。梅雨との関連はなんとなくのイメージというところでしょう。稲穂のように長く伸びて花をつけるものを花穂(かすい)と呼びます。ホリホックの花穂は一気に立ち上がり、花芽がズラッと連なるように付くのが特徴です。花穂下部が先に開花するものの、その後は順番ではなく間隔を開けて花が開いたりします。花芽の数が多く密なうえに、直径が10~15㎝と大きめの花弁であることから見栄えがするので、単植でも庭のアクセントになりますし、ボーダーの後列に並べるとより華やかになっておすすめです。丈夫で育てやすく、ある程度は植えっ放しにしておいても構いません。ただし、数年経つと茎が十分に伸びなかったり、形が乱れたりすることがあるため、できれば春先に株分けをして植え替えたほうがいいと思います。
hollyとはヒイラギのことですが、Hollyhockの名前はヒイラギとは関係ないようです。中英語[1]Middle English 11世紀~15世紀ごろの英語まで遡ると、同じアオイ科で北アフリカや西アジア、南ヨーロッパが原産のマーシュマロウMarsh mallow(学名:Althaea officinalis、和名:ウスベニタチアオイ、ビロードアオイ)を指すのがholihoc。それが見た目の似ているこの植物に当て嵌められたのだとか。holiはholyのこと。「聖地」つまりエルサレムからもたらされたと思われていたためです。hocはマロウ(ゼニアオイ属)を意味します。マーシュマロウはその名の通り湿地を好む多年草で、根から出る粘液から薬やお菓子が作られていました。マシュマロの原型です。フランス語でも植物のマーシュマロウとお菓子のマシュマロはどちらもGuimauveギモーヴといいます。
アオイ科には4000以上の種が存在するそうです。中には古代から人間の生活に密接にかかわってきたワタや、地球温暖化が取り沙汰されるようになってから、二酸化炭素吸収率の高さで注目が集まっているケナフもあります。食用とされるもので身近なのはオクラ。それにカカオ、ドリアンも仲間です。また、園芸種としては、ムクゲ、フヨウ、ハイビスカスなど大振りの花が魅力的なものが多くいます。
アオイというと江戸の将軍家徳川の家紋である三つ葉葵を思い浮かべるかもしれません。先端を中心に向けたハート形の三枚の葉を図案化したものです。これは元々、葵祭で知られる京都の加茂神社が神紋として用いていたフタバアオイの葉を表しているといわれます。フタバアオイは日本の固有種ですが、アオイ科ではなくウマノスズクサ科という馴染みのない科に分類される植物です。実際に葉を比べると違いがわかります。
References
↑1 | Middle English 11世紀~15世紀ごろの英語 |
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