クリスマスが近づくと町中にたくさん出回る植物がポインセチアPoinsettiaです。赤と緑がクリスマスのイメージとして連想され、開花株の鉢植えを中心にして誰もが知るこの時期の定番となりました。最近はピンクやクリーム色のものもありますが、主流はやはり赤です。大きな赤い花びらのように見える部分は苞(ほう)あるいは苞葉(ほうよう)と呼ばれます。これは花の付け根に出る葉のことで、芽や蕾を包んで保護する大事な役目があるのです。ポインセチアは葉の中央に密生する丸いものが花で、花弁がありません。
ポインセチアはメキシコ南部から中央アメリカを原産とする常緑低木です。ただし、自生地へ行くと高さが3~4mにもなる個体もあるとか。現在は300以上の栽培品種があり、世界的に観賞用としての需要が圧倒的ですが、14~16世紀にメキシコ中央部で栄えたアステカ族は薬用および染料用として栽培をしていたといわれます。原産地でのスペイン語の名称はノーチェブエナnochebuena、クリスマスイヴの意味です。やはりクリスマスとは切り離せません。これがスペインでは、フロール・デ・パスクアFlor de Pascua、つまり復活祭の花という名に。スペインでも栽培が盛んで、中でも野菜や果物の産出で有名なアンダルシアのアルメリアAlmeriaは、国内のポインセチア生産の1/3を担います。ここで栽培された苗は、ヨーロッパ各地へと運ばれて広く流通しているのです。
英語名のポインセチアの名は1828年にこの植物をアメリカに紹介した、最初のアメリカ駐メキシコ大使のジョエル・ロバーツ・ポインセットからつけられそうです。20世紀に入りアメリカ各地で品種改良がすすみ、鉢花として定着するようになりました。
ポインセチアは日照時間が一定時間以下にならないと花芽をつけません。このような植物を短日植物と呼びます。よく知られているものではアサガオやキクなどがその仲間です。必要な夜の長さは植物によって違います。ポインセチアの場合、花芽がつくには概ね13時間以上暗くならないといけないようです。そして、大きな苞が完全に鮮やかな赤色に染まるまで40日から60日かかります。クリスマスの時期に合わせて出荷しようとすると自然の状態では間に合いません。そのため人工的に適温の長い夜をつくり開花を早めることをしなければならないのです。毎日13~14時間の間、株の上に袋や箱を被せて光を完全に遮断した状態をつくります。こうすることによって花芽が形成され、苞もきれいに色づくわけです。これが短日処理と呼ばれる方法。ちなみに、キクの場合は、仏花として年間を通して出荷する必要があるため、花が咲かないようにハウスの中を明るくして昼が長い状態に保ちながら、一部ずつ花芽をつけさせるようなやり方です。
ポインセチアの学名はEuphorbia pulcherrima。トウダイグサ科のトウダイグサ属に含まれます。ユーフォルビアと総称されるトウダイグサの仲間は非常に幅広く、ハツユキソウのように小型の一年草からサボテンに似た多肉質のものまであります。