夏場にかわいい花を咲かせ続けるのがランタナLanatana camaraです。常緑の小低木で花壇や生垣、それに矮性のものはコンテナの寄せ植えなどでもよく利用されます。花色が淡い黄色からオレンジになり、やがてピンクへと変わっていくことからシチヘンゲ(七変化)とも呼ばれる花です。花の形も綺麗で、小さな花が茎から広がり、アジサイをずっと小さくしたような球状に見えます。それぞれの花が微妙な色の違いで、上から見ると花火みたいです。葉には光沢があり鋸歯もあるので、これもアジサイに似ていますね。しかし、ラナタナはアジサイとはまったく別の仲間です。アジサイはアジサイ科[1]かつてはユキノシタ科とされたで、ランタナはクマツヅラ科に分類されます。さらに花の見た目が似ているオオデマリViburnum plicatum var. plicatum f. plicatumはレンプクソウ(連福草)科、コデマリSpiraea cantoniensisはバラ科です。実は、レンプクソウ科にはランタナガマズミViburnum lantanaという名の低木もいます。ややこしいですね。
一見同じように見える花でも植物学的な分類以外に、よく見るとわかる花のつき方に違いがあります。茎につく花の並び方を花序と呼びますが、ランタナの場合は散形花序と呼ばれる形です。花をつける茎部分の花軸が短く、その一点から花を支える花柄(かへい)が放射状に伸びて花をつけるタイプで、傘形(さんけい)花序とも呼びます。英語ではumbel。このタイプの花といえば、ニンジン、セロリ、パセリ、コリアンダーなどのセリ科が代表格で、セリ科の学名はApiaceaeであるものの、別名はUmbelliferaeです。umbelの語源はumbrellaと同じで、ラテン語で日傘を意味するumbella。やはり漢字でも傘形のほうがぴったりかもしれません。
この花序に似た形なのが、花軸に少しずつ間隔をあけて花柄がつく散房花序です。コデマリやアジサイの一部、それにサクラなどが含まれます。さらに、フジやギボウシ、ジギタリスのように長い花軸に花柄が間隔をあけてつくタイプの総状花序、グラジオラスやオオバコ、クロコスミアみたいに長い花軸に花柄のない花をたくさんつけるタイプの穂状(すいじょう)花序といったものも。そして、こういった仲間をまとめて無限花序と呼びます。これに対するのが有限花序です。無限花序は伸びた花軸が成長しながら、下からあるいは外側から順に開花し、有限花序では逆に伸びた花軸の先端あるいは中心から順に開花していくという違いがあります。
ランタナの原産地は熱帯地域のアメリカやアフリカです。現在は、世界に約150の種が存在するといわれます。ほとんどが性質強健で、剪定にも耐え、挿し木で比較的に容易く殖やすことができるのでガーデニングにお勧めです。秋には花が丸い実に変わり、緑色から熟して黒へと変化していく姿も見られます。
References
↑1 | かつてはユキノシタ科とされた |
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