植物にとって生育条件の悪い場所では、その環境に合わせたかたちで庭づくりを考えていく必要があります。当たり前のことですが、庭のある場所で植物は育つわけですし、植物は生物なので環境に適応するのにも限界があるからです。植物の生育に欠かせない最低の必要条件というのは温度と水分と明るさの3つ。もちろんこれらは人間の管理の範囲内で調整可能な部分もありますが、本来はその土地の風土に適した植物を育てるというのが正しいといえます。
日本列島の多くの部分は気候的には温帯あるいは温暖帯にあたります。この気候帯で静物画自然に生育可能な温度というのは通常5℃から30℃ぐらいです。しかし適温といえるのは15℃から27℃の狭い範囲になります。中には冬に零下の日が長く続いたり、数メートルも雪が積もったり、夏に気温が40℃近くまで上がったりする地域もあるでしょう。そういう場所では、当然のことながら生育可能な植物は違ってくるわけです。庭のプランを立てるときにはまずその辺りを注意して植物を選び、暑さや寒さを防ぐ工夫も同時に考えなければなりません。さらに近年は地球規模で気候変動が進み、異常気象が珍しいものではなくなっていることもあり、これまでの経験や常識では対応できずに、管理が難しくなってきているのも事実です。
植物生育の3条件のうち、水分については普段の潅水の段階でかなり調整が可能といえます。プランニングの段階では、植物の性質から乾燥を好むものや湿潤を好むものを分けて配植することに気をつけ、混植を避ければいいわけです。あとは水やりの量をコントロールすることで対応できると思います。
明るさ、つまり日照は最大のポイントになります。気候とは別で、その庭自身の置かれた環境としてそれぞれに大きな差がある条件だからです。特に小さい庭の場合にはまわりの建物との関係で制限されてしまうことも多いでしょう。一日中太陽が見られるところであれば理想的ですが、住宅地ではなかなかそれは望めません。実際には、年間平均して1日にだいたい5~6時間の日照があるところであれば、どんな植物でも育てることが可能だと思っていいでしょう。日光の直射を確保できる時間が短くなるにしたがって、生育可能な植物はだんだんと少なくなっていきます。1日の日照が3時間ぐらいしかないと、半日陰といわれあまり条件はよくなくなります。この場合でもある程度は日当たり植物を植えてもOKです。同じ庭の中でもより明るいところに光が好きなものを優先して配置してあげましょう。また、さらに日の当たらないような場所でも植物を育てることはできます。直接日光があたらなくても、他のものの影にならないようにして、周囲をできるだけ明るくすればそこそこの明るさを補えます。建物の外壁やフェンスを白くできれば理想的ですし、庭の中の舗装部分に明るい色の資材を配置したり、や葉の色が明るい植物を使うことだけでも違ってきます。注意するのは、できるだけ草丈の低い植物を植えること。そうでないと光を求めて徒長してしまい、風雨で簡単に茎が折れやすくなるうえ見栄えもよくありません。
半日陰で十分育つ植物には、多年草のアスチルベ(アワモリショウマ)、ジギタリス、ユーフォルビア、リシマキア、ゲラニウム、ヘレボラス(クリスマスローズ、レンテンローズ)、プリムラ、ユーパトリウム、セトクレアセア、グレコマ、つる性のテイカカズラ、ツルマサキ、ハニーサックル、ツルニチニチソウ、ハーブではモナルダ、ミント、タンジー、カラミンタ、ソープワートなどかなりのバラエティがあります。どれも花や葉が美しいものばかり。また、日陰が好きなものには、ホスタ(ギボウシ)、アジュガ、ケマンソウ、ユキノシタ、オリヅルラン、ヘデラ(アイビー)それにシダ類やアジサイ、アオキといったところでしょう。どれもよくイギリスの庭でも見かける植物です。