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読書遍歴

よれよれ金田一耕助

中学時代に、その当時からからよく通っていた渋谷の大盛堂書店へ行くと、色鮮やかなカバーイラスト[1]横溝正史の世界観を美しく表現した杉本一文による角川文庫版のイラストの文庫本がいくつか並んで平積みになっていました。そこで手にした「獄門島」が初めての金田一耕助。読書好きの母に聞いてみると、横溝や乱歩は好みでないと言ってはいましたが、それでも書架には横溝が5冊ほど。そこから金田一が登場するお話しを読みま […]

満潮に乗って

Taken at the flood(1948年)エルキュール・ポアロが活躍するアガサ・クリスティの小説の中で、そこまで有名ではないけれども、とても面白くてお薦めできる作品としてご紹介します。ただし、内容はあくまでも利己的視点によるものなのでご容赦を。タイトルは、エピグラフ(題字)に書かれているウィリアム・シェイクスピア作「ジュリアス・シーザー」”The Tragedy of Juli […]

ポアロ煥発

アガサ・クリスティの描く、名探偵エルキュール・ポアロが活躍する物語には短編も数多くあります。中にはその後の長編の布石となる、言わば習作的なお話もいくつか。日本で刊行されている短編集は独自に構成されたものもあり、原書そのままではありません。そんな短編小説集から、その内容を個人的な興味でご紹介します。(早川書房版をベースにしています) ●教会で死んだ男Sanctuary and other stori […]

松本清張 韋編三絶

清張に限らず小説には、時間を空けて改めて読んでみると必ず新しい発見があるので驚きます。清張の作品の良さは、読み進めるのが楽しくなるような、より面白くしようとする工夫がふんだんに盛り込まれているところでしょう。ここでは何度も読み返してみた本の中で、「点と線」や「ゼロの焦点」といった名高い代表作ではなく、個人的に印象に残っていて清張ならではだと思う作品をご紹介します。※( )内は単行本として最初に刊行 […]

ポアロ慧敏

アガサ・クリスティの作品の中で、名探偵エルキュール・ポアロが登場する小説を個人的な趣味でいくつかご紹介しましょう。ぜひ読んでいただきたいお薦めの本ばかりです。(内容は早川書房版をベースにしています)最初の作品「スタイルズ荘の怪事件」The Mysterious Affair at Styles(1920年)では、その後相棒を務めることになるヘイスティングズ大尉が彼の見た目をこのように話しています。 […]

スペードの女王

中学1年生の時に初めて読んだロシア文学が、アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキンАлександр Сергеевич Пушкинの「スペードの女王」[1]岩波書店刊・神西清訳Пиковая дама(ピコヴァヤ・ダーマ)でした。この短編小説は、1834年に発表された文豪プーシンキンの代表作ともいえる作品です。舞台はサンクトペテルブルク。博打好きでありながら倹約家のゲルマンは、カルタ賭博を見 […]

ポアロ英明

アガサ・クリスティの描く英雄義人として知られているのが、小さな灰色の(脳)細胞little gray cells[1]単に細胞で脳細胞を特定していないを駆使して難事件を解決する名探偵エルキュール・ポアロです。33の長編小説と53の短編小説、戯曲「ブラック・コーヒー」”Black Coffee”に登場します。テレビシリーズのデヴィット・スーシェや映画のピーター・ユスチノフのイ […]

ミス・マープル健在

ミス・ジェーン・マープルMiss Jane Marpleはセント・メアリ・ミード村St. Mary Meadに住む編み物好きの老婦人。厳つい警察官には話せないことも小柄なおばあさんには話せてしまうというところが強みです。ポアロと違って明晰な頭脳で推理をするのではなく、持ち前の観察眼と洞察力で、周りの人々と話して得た情報をパズルのように組み合わせ、真実を突き止めていくのが基本スタンス。と思いきやとん […]

怪盗ルパン全集

小学校3年生の時に、近所に住んでいたいくつか年上の幼馴染が引っ越すことになり、本を何冊かくれました。そのうちのひとつが南洋一郎(みなみよういちろう)の冒険小説「緑の無人島」[1]講談社・1938年初版でした。暴風で難破した客船から、ボートで流れ着いた南洋の孤島でサバイバルに挑む夫婦と4人の子供たちのお話です。少年の心を鷲掴みにするようなワクワクする文章の連続で、すぐに読み切ってしまい、何度も読み返 […]

松本清張 一読三嘆

作品を読み始めた中学時代には、松本清張といえばすでに大家となっていて、映画やドラマで目にすることもよくありました。最初は母の書架にあったカッパノベルス版の「点と線」。そこから家にあるものを読み尽くすと、図書館へ通って手当たり次第に借りては読み、特に推理小説の範疇に入る作品はあらかた読破したでしょう。綿密な人物描写や予想を超える展開もあり、地道な捜査が空振りに終わることもあれば、大胆な推理が的中する […]