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あれやこれや

アガサ・クリスティと二重の意味のフォリー / Agatha Christie and Folly with a Double Meaning

アガサ・クリスティが著したポアロものの長編小説、”Dead Man’s Folly”「死者のあやまち」(1956年初版)。よく練られた構成の上質なミステリーなので、アガサをあまり読んでいない人にも読んでほしいお話のひとつといえます。何しろ意味が深いタイトルなんです。面白いのがfollyフォリーという単語。これには名詞として二つの違った意味があります。ひとつは日本 […]

ミス・マープル天誅 / Miss Marple, heaven’s punishment

ロンドンから南へ25マイルほど離れた小さな村セント・メアリー・ミードに暮らす老婆ミス・ジェーン・マープル。みんなの話をじっくり聞いてそこから真相を導き出すのが得意です。そのうえ、わざと犯人をあぶり出すような小細工を仕掛けることもお手の物というのが素晴らしい。ここでは、つながりのある2つのお話を自分勝手にご紹介します。(内容は早川書房版がベースです) ◆カリブ海の秘密A Caribbean Myst […]

ポアロ席巻 / Poirot Dominance

ベルギー人の名探偵エルキュール・ポアロが見事に事件を解決するお話の中からお薦めをご紹介。テレビシリーズ「名探偵ポワロ」のデヴィッド・スーシェの姿でイメージが出来上がってしまっていると思われますが、以前にも書いている通り、小説に登場するポアロは身長が5フィート4インチ(約162cm)と非常に小柄です。卵形の頭をしているものの、禿げてはいません。そしてでっぷりとした肥満体系でもありません。少し頭の中の […]

アガサの童謡殺人 / Agatha’s Mother Goose Rhyme Murders

日本のミステリーでは、詩や俳句、物語、その土地の伝説とか言い伝えなどに絡めたプロットをまとめて「見立て殺人」と呼んだりします。アガサ・クリスティの小説にもたくさんあり、特に童謡によるものが有名です。17世紀のフランスでペローによって出版された”Histoires ou contes du temps passé, avec des moralites”「昔ばなしと教訓」とい […]

よれよれ金田一耕助

中学時代に、その当時からからよく通っていた渋谷の大盛堂書店へ行くと、色鮮やかなカバーイラスト[1]横溝正史の世界観を美しく表現した杉本一文による角川文庫版のイラストの文庫本がいくつか並んで平積みになっていました。そこで手にした「獄門島」が初めての金田一耕助。読書好きの母に聞いてみると、横溝や乱歩は好みでないと言ってはいましたが、それでも書架には横溝が5冊ほど。そこから金田一が登場するお話しを読みま […]

満潮に乗って / Taken at the flood

Taken at the flood(1948年)エルキュール・ポアロが活躍するアガサ・クリスティの小説の中で、そこまで有名ではないけれども、とても面白くてお薦めできる作品としてご紹介します。ただし、内容はあくまでも利己的視点によるものなのでご容赦を。タイトルは、エピグラフ(題字)に書かれているウィリアム・シェイクスピア作「ジュリアス・シーザー」”The Tragedy of Juli […]

ポアロ煥発 / Poirot Intelligence

アガサ・クリスティの描く、名探偵エルキュール・ポアロが活躍する物語には短編も数多くあります。中にはその後の長編の布石となる、言わば習作的なお話もいくつか。日本で刊行されている短編集は独自に構成されたものもあり、原書そのままではありません。そんな短編小説集から、その内容を個人的な興味でご紹介します。(早川書房版をベースにしています) ●教会で死んだ男Sanctuary and other stori […]

松本清張 韋編三絶

清張に限らず小説には、時間を空けて改めて読んでみると必ず新しい発見があるので驚きます。清張の作品の良さは、読み進めるのが楽しくなるような、より面白くしようとする工夫がふんだんに盛り込まれているところでしょう。ここでは何度も読み返してみた本の中で、「点と線」や「ゼロの焦点」といった名高い代表作ではなく、個人的に印象に残っていて清張ならではだと思う作品をご紹介します。※( )内は単行本として最初に刊行 […]

ポアロ慧敏 / Poirot Wisdom

アガサ・クリスティの作品の中で、名探偵エルキュール・ポアロが登場する小説を個人的な趣味でいくつかご紹介しましょう。ぜひ読んでいただきたいお薦めの本ばかりです。(内容は早川書房版をベースにしています)最初の作品「スタイルズ荘の怪事件」The Mysterious Affair at Styles(1920年)では、その後相棒を務めることになるヘイスティングズ大尉が彼の見た目をこのように話しています。 […]

聖ゲオルギウス / Saint George

聖ゲオルギウス(英語:Saint George)というキリスト教の聖人をご存じでしょうか。ヨーロッパでは古くから数多くの絵画や彫刻の題材として扱われ、その多くは白馬に跨った騎士が長い槍で怪物を突いている姿で描かれます。これは「聖ゲオルギウスのドラゴン退治」として、カトリックだけでなく東方正教の世界でも広く知られている逸話です。中世には騎士道精神にもつながる信奉の対象となり、重要な聖人のひとりとして […]