クローバー

いわゆる雑草として扱われる草花の中でも、親しみの深いもののひとつがクローバーCloverでしょう。ところかまわず生えてきて、特に芝生を手入れしている人たちなどには嫌われることもあります。逆に、密に生い茂り強い性質をもつことからグランドカバープランツとしての利用も可能です。クローバーという名で総称される植物は、世界中の広い地域に分布していて、日本ではマメ科シャジクソウ属と呼ばれます。シャジクソウ属の学名はTrifolium。ラテン語で三枚の葉の意味です。英語に転訛したTrefoilはクローバーの別名でもあります。もちろん三つの小さな葉がかたちづくる姿そのままを表しているということ。このように葉柄の先端につねに三枚の小葉が出る葉の付き方を三出複葉(さんしゅつふくよう)と呼びます。その葉が四枚ある変異種がいわゆる四つ葉のクローバーです。出現がまれであることから幸運の訪れを予見する言い伝えが広がり、日本でも定着しました。クローバーが生えていると、ついつい四つ葉を探してしまうことはありませんか。極めて珍しいものの、五つ葉以上のクローバーが見つかるかもしれません。

クローバーの仲間は260種ほど確認されていますが、日本の在来種はシャジクソウのみで、それ以外は牧草として、あるいは園芸用として海外からもたらされました。中でも一番ポピュラーなのがシロツメクサWhite clover(学名Trifolium repens)です。江戸時代にオランダから輸入されたガラス製品などの箱に緩衝剤として詰め込まれてやってきたのでその名があります。
シロツメクサの近縁には姿が似ていて花の色が違う、アカツメクサRed clover(Trifolium pratense)、モモイロツメクサ、ベニバナツメクサなどが存在します。さらにはシロバナアカツメクサなるものまで。植物の名前に色を使ってはいけないという典型ですね。植物の分類としてのシロツメクサとアカツメクサの違いは花色ではなく、葉の付き方です。アカは葉の直上に花芽が付くので葉と花がくっついています。シロのほうは長く伸びた茎の先に花が付くのが特徴です。またこれとは別に、単にツメクサ(学名Sagina japonica (Sw.) Ohwi) と呼ばれる草花があります。これは漢字で爪草と書くナデシコ科のまったく違う植物です。葉が細くとがっている形が鷹の爪に似ていることからこの名前がつけられました。

左:アカツメクサ / 右:シロツメクサ

クローバーとよく間違われるのがカタバミ(オキザリス・カタバミ科カタバミ属)です。同じ三出複葉で、しかも葉の外側に切れ込みがあるためハート型に見え、なんとなく四つ葉のクローバーのロマンチックなイメージにつながるからかもしれません。クローバーとカタバミが混同される一番の原因は、アイルランドの国花として様々なモチーフに使われるシャムロックShamrockです。シャムロックとは三つ葉の草を意味するので、クローバーもカタバミもどちらでもあてはまります。これは、アイルランドにキリスト教を伝えた聖パトリックが、三位一体を説明するために手近にあった三つ葉の草を用いたとされることによるものです。そのためシャムロックは聖パトリックの象徴でもあります。

オキザリス

ところが、シャムロック=クローバーと思い込んでいる人が多いのが事実。毎年3月17日の聖パトリックの日には、アイルランドだけでなくアイルランド系の住民が多いアメリカやカナダの東部、オーストラリア、ニュージーランドの一部では町中が緑色に染まります。お祝いをする人々が身に着けているのは、明らかにカタバミを模ったシャムロックがデザインされた服やアクセサリー。多くの人はその三つ葉マークはクローバーなのだと信じています。

聖パトリックの日