フリット

ベルギーでは国民食ともいえるスナックです。ポムフリット Pommes Fritesはフランス語でフライドポテト。フリットだけで通用します。ベルギーに行ったら、街角にあるフリット専門店で揚げたてのポテトを食べましょう。ブリュッセル在住の方によると、最初は低温その後高温で二度揚げすることがサクサクでおいしい理由とか。楽しいのはソースの豊富さです。フリット屋さんで注文するとどのソースにするかきかれますが、お店によっては10種類以上も並んでいて迷うことも。定番はケチャップにマヨネーズ、バーベキュー、タルタルとかですが、ケチャップとマヨネーズをベースにしたアメリケーヌ(タマネギとピクルス)、アンダルシア(赤ピーマン)、サムライ(ハリッサという北アフリカの辛い調味料)などいろいろ。なぜその名前か不明なものもありますが。いまはベルギーだけでなく、周辺のヨーロッパ各国やアメリカにもベルギー風フリットのお店があって、独自のソースで人気だったりします。

ちなみにイギリスではフライドポテトのことをチップス、ポテトチップスのことはクリスプスといいます。呼び方だけでなく食べ方にもお国柄が。学生時代のことですが、ウェールズ人の友人がフライドポテトを食べるときにお酢をくれるよう頼み、たっぷり振りかけておいしそうに食べ始めたのを見て、アメリカ人たちが一斉に顔をしかめていたことを思い出しました。彼曰くイギリスではビネガーが当たり前だそうです。イギリスの有名な料理のひとつで、フライドポテトがパートナーといえば、フィッシュ・アンド・チップス。これにはビネガーやケチャップよりもタルタルソースが合いますね。アメリカや日本でフライドポテト、フレンチフライが定番のお供になるのはハンバーガーかもしれません。ベルギーでは、ムール貝の白ワイン蒸し、フランスではビーフステーキです。
フリットはフランス語で正しくはポム・デゥ・テール・フリットpommes de terre fritesと言います。縮めてポムフリットです。pommes de terreがジャガイモで、大地のリンゴという意味。イタリア語でトマトをポモドーロpomodoro=黄金のリンゴ、オランダ語でオレンジをシナーサペルsinaasappel=中国のリンゴというようにリンゴベースです。

余談です。80年代に活躍したオランダ代表のサッカー選手にRuud Gullitという人がいました。日本ではルート・フリットと表記します。彼が現役時代に日本の取材に対して、日本人がカタカナをそのまま発音するとフライドポテトのフリットみたいでちょっと違うんだけどみたいなことを言っていました。でもオランダ語のGの発音はのどの奥から上あごをこするように息を出す独特の音です。Fの音とは全然違うのですが、何人かのオランダ人に発音してもらっても、カタカナではフリット以外に書けませんでした。

中央:Ruud Gullt / Foto: Croes, Rob C., Nationaal Archief / Anefo