プリムラ

暦のうえで立春を過ぎると、心なしか太陽の輝きが増したようになり、気温はまだ低くても、生物たちが少しずつ活動を始めます。土の中の微生物たちが動き出すと、地温も上がり養分も増えるので冬の間成長を抑えていた植物も徐々に春の準備に入るのです。細菌、糸状菌、放線菌などの土壌微生物は、ティースプーン1杯の土の中に数億はいるといわれていて、その目に見えない微生物が活発に動くことで土壌全体の温度が上昇し、やわらかでふかふかの土が作られていきます。

そんな早春から花壇を彩ってくれる植物のひとつにプリムラがあります。サクラソウ科サクラソウ属に分類され、その学名のprimulaは、ラテン語で「始め」を意味するprimusから春の始めに咲く花として名づけられたものです。多くのプリムラは耐寒性の多年草ですが、霜が降り零下の気温が続くところでは育ちにくく、逆に雪に覆われるところではその下に隠れて冬を越します。また気温が20℃を越えると生育が弱まっていくので、日本では夏越しが少々難しく、そのため一年草として扱われることが多い植物です。それでも夏の間はすずしい日陰で乾燥させないように管理してあげれば、株も大きくなり次のシーズンにまた花を咲かせてくれるかもしれません。

500以上あるというプリムラの仲間のうち、日本でよく出回っているはポリアンサ、マラコイデス、オブコニカといったところでしょう。ポリアンサとその交配種のジュリアンは、小ぶりで花色が豊富にあるうえ次々に花を付けるので、寄せ植えにもおすすめです。花壇に植える場合は色ごとに列植して、春咲きの球根草花などとともにボーダーを作るといいと思います。

日本にはサクラソウが自生していて、北海道から九州まで広い範囲に分布しています。江戸時代には園芸用の栽培がおこなわれるようになり、数多くの交配種が作出されました。現在でも愛好家が多く、各地で品評会や展示会が催されています。このサクラソウの学名はPrimula sieboldii です。日本へ西洋医学を伝えるとともに、ヨーロッパへ日本文化を紹介したフォン・シーボルトの名が付けられています。ほかにもスダジイCastanopsis sieboldiiやオニヤンマAnotogaster sieboldii などの数多くの学名が、彼の功績を称える意味で命名されました。